...白い快楽。
GARDENISSIMA2003 : 2003/03/23
Posted at 2003/03/23 06:00:00 0/0


2003/03/23。4:30。

起床。ストレッチ。身体がきしむ。

7:00。大会コースのスタート地点、セチェダ到着(標高2518m)。コースはきっちりと整備されている。
昨シーズンよりも軟らかく適度にスキーのエッジが立つ感じ。それでも日本の春の雪に比べるとはるかに堅いのだけれど。


インスペクション開始。係員は旗門にフラッグをつけている真っ最中。それを後からついていくようにしてコースを確認する。今回のコースはデュアルコースが合流する近辺がわかりにくい。困った。

インスペクション終了後、スタート地点に戻ってウォーミングアップをする。悪い癖がでてしまった。内倒して左膝の外側を打ち付けるようにして転んでしまった。ちょっと痛みがあるが滑れないことはない。ゆっくりとスピードを抑えながら身体を暖めた。

昨年との大きな違いは天気。今年は快晴。標高が高いのにTシャツでも大丈夫なくらいの強い日射し。すでに顔は真っ黒に日焼けしている。次々と選手がスタートしていくけど、何故か時間はゆったりと過ぎていく。




(コースから外れたところに立っているキリスト像)


(START前はまだ余裕。)


11:00。START。同走はFISHERのテストチームの人。最初の急斜面はかなり雪が弛んでいて、快適なバーンになっていた。安心して"自分なりに"旗門へアタックする。それでも隣の人は速い。あっという間に先行してしまった。最初の急斜面が終わりロッジの前を通過する。ここには観客がいて盛り上がっている。果たして自分のカッコ悪く、鈍重な滑りはどう思われたのか?。興味があるところだ。

それはさておき。レースである。やはり合流地点前で旗門の入り方を間違えた。この後「間違えた」という思いで頭の中がイッパイイッパイになりながら滑っていた。

合流後はひたすらクローチングで速度をかせぎ、ふらふらになりながら旗門をクリアしていく。少しはカタチになった滑りになったのか、それともジムでのトレーニングの成果か。息は荒いが、身体はまだまだ動いている。



(GOALまで残り1km。)



GOAL。計測小屋の上にあるタイム表示を見る。5:33。去年よりも10秒短縮できた。コースの条件が昨年よりも良いことを考えると素直に喜べないが。

顔を上げられない。流石に1km以上の緩斜面のクローチングは堪える。やはり手は痺れている。その痺れは手から始まって身体に伝わり、最後には頭の中で響くような感覚になる。ゴールエリアで味わえる緊張からの解放感。スキーヤーズハイの余韻を力一杯感じられる。これがあるからこそイタリアでのスキーレースに挑戦するということは、何ものにも代え難いのだ。

いろいろなレースにおいて、イタリアの人々は素直に感情を表現する。それは速さへの賞賛や挑戦への労いとなって、素晴らしい笑顔と歓声になる。(もちろん悪い表現になることもあるが...)



ゴールエリアでSさんを待つ。その人は日本人であり、今回のレースに参加した唯一のスノーボーダーである。(特別クラスとして参戦)。Sさんは一番最後に滑ることになっていた。

姿が見えた。MCによる実況と観客の歓声が大きくなる。その理由がわかった。スノーボードでひたすら滑ってくるSさんの後ろから、レーススタッフとスキーヤーが、まるでフォーメーションを組んだかのように、大勢で一斉に滑り降りて来ているのだ。そしてSさんはガッツポーズでGOAL。まるでF1最終戦での優勝者のウィナーズランの様。カッコよかった。ちょっと泣けた。

15:00。表彰式。セントクリスティーナの街の中程にあるステージで淡々と表賞式が進行する。昨年に続いて参加したKさんが、またしてもカテゴリー2位で表賞を受けた。嬉しそうだ。



それからしばらくして全カテゴリーの表賞が終わったと思った。その時、不意に自分の名前を呼ばれたような気がした。「!?」と思いつつステージに近寄り、司会者に確認する。するとニコニコしながら「ステージに上がってこい」と身ぶりをする。どうやら2年連続で一番遠い国から参加した酔狂な人に賞品をあげるということらしい。

あまりにも突然すぎたのでなんのリアクションもできず、賞品を受け取る。ガルデニッシマのロゴが入ったリュックと、手巻き式の時計。さぞかし間抜けな顔をして受け取ったことだろう。ちなみに賞品を渡してくれた人は綺麗な女性でしたよ。

長い一日はこうして終わりを迎えた。
(続く)